Glossary of Terms
サイケデリックス用語集
【あ】
アーナンダ(梵 ānanda )
古代インド哲学、とくにヴェーダーンタ学派において、意識の究極的な存在様式を指す。「至福」「永遠」などとも訳される。最初に発見された内因性カンナビノイドである「アナンダミド」はこの語に由来する。
アンガージュマン(仏 engagement)
自己の責任において状況に実存を投げ入れること。サルトルの実存主義の中心的概念。「投企」とも訳される。
アヤワスカ(ケチュア語 ayahuasca)
Ayar(精霊、死者)とhuasca(蔓状の植物)の合成語。
エクスタシー(英 ecstacy)
エンセオジェン(英 entheogen)
→「エンテオゲン」
エンタクトゲン(英 entactgen)
サイケデリックスの中でも、MDMAのような共感作用を持つ物質の総称。「共感薬」とも訳される。
エンテオゲン(英 entheogen)
サイケデリックスの別名。意訳は「顕神薬」。
エンパトゲン(英 empathogen)
「エンタクトゲン」と同義だが、「pathogen」には病原体という意味もあるので忌避されることもある。
①霊魂が肉体の制約から解放され、唯一者との合一へと回帰する状態のこと。新プラトン派哲学の用語エク・スタシスに由来する。「忘我」とも訳される。
②性的な快楽などに没入して我を忘れるような状態のこと。
③MDMAを指す俗語。MDMAが愛情の感覚を高めることに由来する。省略してX(エックス)ともいう。
【か】
紙(かみ)【俗】
LSDを指す隠語。LSDやその類似物質はごく微量で作用するため、紙や角砂糖に染みこませた形で流通していることが多い。
我利我利(がりがり)
自分の利益だけを考える者を貶めて言う仏教語。餓鬼道に堕ちた亡者が「がりがり」と欲望を貪るさまをあらわす擬音語。(→対義語「菩薩」)
勘ぐり(かんぐり)【俗】
精神活性物質の作用によって引き起こされる一過性の妄想状態。「警察に追跡されている」といった被害妄想の形をとることが多い。とくに大麻・カンナビノイドで顕著であり、カンナビノイドの薬理作用と統合失調症の幻覚妄想状態が共通の作用機序をもつ可能性が指摘されている。
カンナビノイド
共感薬(英 entactgen, enpathogen)
エンタクトゲン、エンパトゲンの日本語訳。
クサ(草)(英 weed)【俗】
草。大麻を指す隠語。類似の隠語としては、野菜、葉っぱ、など多数あり、時代によっても変化する。
クスリ(くすり) 【俗】
「麻薬」「薬物」を略して片仮名表記した俗語。
→類語「ヤク」
幻覚薬(英 hallucinogen)
英語「hallucinogen」の日本語訳。閉眼時には幻覚が見えるが、開眼時には見えるものは幻覚ではなく錯覚である。
精神医学領域では「psychedelics」の訳語として「幻覚薬」が使用されており、意味上の混乱を招いている。
アサに含まれる精神活性物質の総称。
顕神薬(英 entheogen)
キメる(きめる) 【俗】
「決める」に由来。精神活性物質を使用する行為を指す俗語。その結果として変性意識状態に入ることは「キマる」という。接頭辞「キメ-」として「キメサウナ」など、そのような意識状態で行う行為を指す場合にも使われる。
→「曲がる」も参照
「エンテオゲン」の日本語訳。
コンステレーション(英 constellation)
星座。付置。集合的無意識の内部における元型の配置。ユング心理学の概念。
【さ】
再帰的(英 recursive)
記述の内部で記述される手続き自体が参照されることをいう。主観的な思考過程においては「考える自己」について考える自己」について考える自己・・・といった自己言及性と無限退行が生じる。
スピリチュアル(英 spiritual)
→「スピリチュアリティ」も参照。
形容詞形を名詞形と勘違いした誤用。また、都合良く勘違いした思想。「スピ」とも略される。この場合の動詞形は「スピる」。罵倒の意味を強める場合には、それぞれ「ガチスピ」「スピリ倒す」となる。
サイケ(英 psyche )
①「サイケデリックス」の省略形。
(→「サイケデリックス」)
②サイケデリック体験をモチーフにしたデザインや音楽の様式。→「サイケデリックス」も参照
サイケデリックス(英 psychedelics )
ギリシャ語のプシュケー(魂)とデロス(顕現)を組み合わせてハンフリー・オズモンドが造語。「サイケデリクス」とも表記される。
→「サイケ」「精神展開薬」も参照
職務質問
警察官が通行人等を停止させて質問すること。原則として対応は任意である。
スピリチュアリティ(英 spirituality)
英語からの音訳。→「霊性」も参照
精神展開薬(英 psychedelics)
サイケデリックスの日本語訳。京都大学の藤岡喜愛による日本語訳。加藤清は「精神拡張剤」という訳語を作った。
精霊(英 spirit)
霊性を持った人間以外の存在で、動植物や自然物の姿をとってあらわれるもの。キリスト教において父と子と三位一体をなす存在は「聖霊」の字をあてる。
世界没落体験(独 Weltuntergangserlebnis)
ドイツ精神病理学の概念。世界の破滅が間近に迫っている、あるいは終末の後に新しい秩序が作られる、また、そうした一連の出来事の中で自分が特別な役割を担っているという妄想的観念。統合失調症の初期にあらわれる症状のひとつだが、サイケデリック体験や宗教的世界観の中にも同様の観念が存在する。
【た】
ドラッグ(英 drug )
英語からの音訳→「薬物」も参照
投影(独 Projektion)
精神分析の用語で、防衛機制の一種。火星という惑星の赤い色彩に対し、自己の内部で抑圧している攻撃性という意味を付与するような現象をいう。
【な】
ヌミノーゼ(独 Numinose )
ドイツの神学者ルドルフ・オットーが『聖なるもの』において、歓喜と恐怖の両面性を持つ畏怖の経験を表す言葉として提唱した概念。サイケデリック体験でも、バッド・トリップとグッド・トリップは表裏一体のものと体験されることが多い。
【は】
物質(英 substance)
①物質一般の呼称。
②精神活性物質を指す場合に、「薬物」や「麻薬」のような否定的なニュアンスを避けるために推奨される用語。
ブリブリ(英 bling-bling ) 【俗】
華美な宝飾品などを「じゃらじゃら」と身につけて見せびらかすさまを表す俗語。レゲエやヒップホップの歌詞の中で、大麻の使用による高揚感や陶酔感をあらわす意味で使われるようになった。動詞形は「ブリる」(【類】キマる、ハイ、ストーン)
菩薩(梵 bodhisattva 巴bodhisatta)
①悟りを求めているが、まだ悟りを得ていない者。主に上座仏教で用いられる。
②自分が悟りを得るよりも、衆生が悟りを得ることを助ける存在。主に大乗仏教で用いられる。(→対義語「我利我利」)
【ま】
曲がる(まがる)【俗】
「キマる」が精神活性物質の作用全般を指すのに対し、「曲がる」はサイケデリックス、とくにLSDを摂取した意識状態を指す。サイケデリック体験において、垂直なものが湾曲して知覚されることに由来する。名詞形は「曲げ」。
→「キメる」も参照
麻薬(英 drug, opioid)
①オピオイドなどの麻薬性鎮痛薬のこと。
②麻薬性鎮痛薬と同様に依存性の強い物質全般を指す用語。
③日本では「麻薬及び向精神薬取締法」によって、麻薬性鎮痛薬と同じスケジュールに分類されている物質を指す法律用語。
④違法薬物全般を指す言葉としても用いられるが、違法薬物には麻薬性鎮痛薬ほど依存性が強いものは少ないので、総じて多義的でかつ曖昧な概念。
【や】
ヤク(やく)【俗】
「薬物」あるいは「麻薬」の略語。→類語「クスリ」。
薬物(英 drug)
薬理作用を持つ物質全般を指す用語だが、とくに依存性を持つ精神活性物質を意味する。身体的・精神的な毒性を持つという含意があるため、精神医学の診断基準であるDSM-5以降は、「物質(substance)」という中立な用語の使用が推奨されている。
【ら】
リビドー(羅 libido)
精神分析の用語で、生命エネルギーの基本にある性的欲動の原動力。
霊性(英 spirituality)
神酒(みき)
日本で神々に捧げるアルコール飲料。
人間の精神の超越的な側面。「body, mind, spirit」という階層構造の一部として理解されることが多い。英語からの音訳は「スピリチュアリティ」。