
現代社会とサイケデリックスをつなぐ
ブラジルのアヤワスカ
原点回帰、利他の精神への目覚め、社会の豊な循環――。
サイケデリックスは本当に規制されるべき「危険な幻覚剤」なのでしょうか。
欧米を中心に世界で進むサイケデリック・ルネサンス。
日本でもいま、精神疾患の治療薬としてアカデミズムと大手製薬会社が
手を繋ぎ、急速に研究が進められています。しかし、まだまだ一般の人の生活からは
かけ離れているのが現状です。いっぽう、日本の裏側ブラジルでは、
最強のサイケデリックス「アヤワスカ」が、
都市部の中産階級の人々の間に広がり、日常の中で有効活用されています。
ここでは書籍には収録しきれなかった、サイケデリックスと現代社会をつなぐ
ヒントに満ちた「ブラジルのアヤワスカ」について、著者に語っていただきます。

Vol,01_
超越よりも「つながり」回帰のサイケ体験
ブラジルではサイケデリック作用を示す「アヤワスカ茶」を礼拝に用いる「サント・ダイミ」と、「ウニオン・ド・ヴェジェタル(UDV)」という二大「アヤワスカ系新宗教」が、70年代より都市部にも広がり、主に研究者や学者、医者といった知的な中産階級の人たちの間に浸透しています。
私は2004〜2005年にかけて、ブラジル、パラナ州クリチーバの「サント・ダイミ」に通い、調査をしていました。礼拝は毎月、新月と満月の夜に行われ、みなそれぞれの仕事を終えたあと、郊外の森にある山小屋のような教会へ集まります。
創設者イリネウ(vol2の記事をリンク)の写真と、木製の小さな十字架だけが机の上に置かれている質素な空間で、男性は白のスーツ、女性は白のドレスを纏うのが決まりになっていますが、それ以外、厳密なルールはありません。儀礼が始まると皆一列に並んで、グラスに注がれたアヤワスカ茶を順番に受け取ります。少しとろみのある茶褐色のお茶は、コーヒーを煮詰めたような苦味と、強い酸味が独特な味わいです。これを一気に飲み干し、しばらくすると徐々に意識が拡張し始めます。
